裁判官に間違いはないのでしょうか?裁判官の良心とは? 袴田事件を通して、日本の問題点を私なりに日記にしたいと思います。

2007年07月10日

こわれたグライダー

(1981年)
 11月8日
 人間の不幸、災いなどというものは、何の予告もなく訪れるものである。突然にすべて
のものが私の前から閉ざされてしまった。そして、自分のなかが置き換えられてしまう。
この日以来、世の中のものが陰気に恐怖を与えながらせまってくる。
 代用監獄の拷問場は黒のカーテンが引かれて昼なお薄暗くムシ風呂の如く暑い。突き飛
ばされて窓辺のカーテンに触れた。わずかな隙間から外を見た。確かに明るいと思った。
よく見ると視界全体が真っ赤だ。非常なはげしさでなにかが私の頭と体を打つが、然し感
じは薄い。麻ひしたのならこの際有り難い。並みの激しさではなくて、身体が無闇にそし
て不意に飛ぶのだ。こわれたグライダーを一瞬連想させた。舞い上がるが直ぐに落下する。
その間にも罵声が響いている。デスクにしがみつくとそこの顔が泣いていた。権力を持っ
た無能の暴団がいつものように凄んでいる。時としてそれはふざけているようでもあった
が、決して楽しそうではなかった。以前はいつもとてもたのしげに私の所にきた刑事は、
私に背をむけとても哀れな目つきで私を見つめた。
 調室の壁に絵がかけられていた。警察に来た当初はその絵を見上げると景色は私の良心
に一緒にほほえむものだったが、その景色は以後、悲しげな表情さえあらわした。代用監
獄の電灯もすべて輝きを失っていた。物の色はもとのままだったが、以前と違って物すべ
てのなかに生命が失せていた。食物をみるとむしろ吐き気がした。

 私と顔を会わせるすべての人が、私を犯人にデッチ上げようと必死になっているように
みえました。人権侵害団はしきりに言いました。巌が犯人だと世間では皆思っていると、
聞き込みにいくと袴田が犯人だと皆言っていると。私はこのような事を繰り返し聞かされ、
この社会全体が私を抹殺しようとしているのだと思わざるを得ませんでした。私は見るも
の、触れるものすべてが恐ろしくてなりませんでした。終日ビクビクしていました。ある
夜、私は涼を感じました。そして爽やかな風を覚えると途端に、ムシ風呂に閉じ込められ
るのです。もうろうとしているとまた涼風が吹き込むのです。私はムシ風呂に入ったり出
たりしているのだと思いました。ひょっと気がつくと私の顔を悪魔がのぞいていました。
戦りつを覚えて手の平で顔をおおいました。私は人類が逆に滅びるのだとその時思いまし
た。そうでなかったら罪なき私の顔を悪魔がのぞくはずはないと思ったからです。前方の
一箇所が真っ赤になっていました。あれは富士山が燃えているのだと肌で感じました。そ
れは日本の終わりをつげているようでした。誰かが私の顔を冷たいタオルで拭きました。
その何者かは、あやつり人形みたいでありました。何もかも不自然で奇妙でありました。

 何もかも不自然で奇妙であった。またぞろ繰り人形が動いて花瓶を前に置いた。無色の
花がさしてあるなと思った。誰かが奇麗だろうと言ってわたしの前に押し出した。私はこ
の花は枯れそうな魂だなとみた。親類の魂ではないか。皆、直接、間接的拷問にかけられ
て泣いているのだ。とても悲しかった。光りがチカチカとゆれていた。天から星がおちて
くるに違いないと思った。朝になっても太陽は昇るまい、昨日が太陽の照る最後の日であ
ったのだ。
 机のろうそくに火が点けられた。これが燃え尽きるとわたしは死ぬし、世界は滅びるの
だと思っていた。


袴田巌さんの獄中日記です。 
多くの手紙がご家族、友人知人のもとに届けられ、確定後も、生きる証として、また、無実の証として、毎日の日記がご家族のもとに届けられている。


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こわれたグライダー へのコメント
こんにちわ^^

以前、「袴田事件 死刑囚の無罪を当時の裁判官が涙の告白」ビデオがYouTubeあたりにUPされてて、うちのブログでも紹介したことあったんですがすぐに削除されてしまいましたね。
一応、朝日TVからのクレームで・・ということのようですが、おそらく著作権云々とかいうのは表向きの建前で、当局からの圧力によるもんだろうと思っています。
あのビデオは説得力ありましたからね・・・

ところで、審理不尽?ということについて、ちょっとお伺いしたいのですが・・
というのも、「植草一秀氏を応援するブログ 」http://yuutama1.blog.shinobi.jp/Entry/155/
http://yuutama1.blog.shinobi.jp/Entry/147/ で知って驚いたんですが、裁判で弁護側から出した証拠には全て検察側の同意が必要で、検察側が不同意のものについては裁判官すら見ることができないとか・・・
(私の勘違いならすみません)

どう考えても異常としか思えないそんな決まりがあるというのが私なんかには信じられないことです。
検察側は、でっちあげ・捏造の証拠をいくらでも自由に出せるのに対し、弁護側の出す証拠には正当なものであっても全て検察側の許可が必要って・・・

まさしく、なにがなんでも犯罪人に仕立て上げるための裁判としか思えません。
そうでなくても、裁判官に圧力がかかって正当な判決が出されないケースが非常に多いように思うのに・・・

このような異常な法律?が決められ、まかり通ってるというのは、いったいどういうことなんでしょうか?

(ちなみに私自身は、こういったことについて専門知識も全くない素人です)
Posted by いんきょ at 2007年08月27日 14:42
一刻も早く袴田さんを助けてください!
マスコミ、ネット、世間の力を味方につけて!
Posted by at 2007年09月15日 14:33
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